切削加工も研削加工も同じ機械加工に該当し、成形する方法も似通っていることから、加工方法がよく混同されがちです。しかし、両者には明確な違いがあります。この記事では、切削加工と研削加工の特徴やそれぞれの違いについて解説します。
切削加工とは、代表的な機械加工の一つで、刃物で素材の一部を切断したり削ったりして目的の形状やサイズに加工する技術です。工具または素材自体を高速回転させて、不要な部分を除去して形を整えていきます。切削加工にはいくつか種類があり、再現したい形状に合わせて切削加工の種類を使い分けて加工を行います。
研削加工も切削加工と同じく機械加工の一つで、高速回転する砥石を素材にあてて表面を削り取っていく技術です。表面を少しずつ削り取るため、高精度な加工に向いています。また、素材に対して工具が面で当たるため面粗さを出しやすいという特徴があり、表面を滑らかに仕上げることができます。
切削加工では、工作物に直接刃を当てて、高速回転する力で表面を削り取っていきます。削り屑が出ますが、その分形を大きく変える加工が行えます。外径加工や内径加工、平面加工、溝加工、段差加工、ねじ切り、穴加工など様々な加工が可能です。
研削加工は、工作物に砥石を当てて、同じく高速回転する力で表面を削り取っていきます。使用する砥石には砥粒と呼ばれる硬質粒子が含まれており、これが刃の役割を担っています。ダイヤモンドといった極めて硬い素材が使用されているため、硬い加工物でも加工が行えます。
切削加工と研削加工も、素材の一部を除去して加工するという点では共通しています。しかし、これまで説明してきた通り、それぞれ加工の特徴に違いがあります。
切削加工は刃物を使うため削れる部分が大きく、全形を成形するのに適しています。一方で研削加工は砥石を使うため削れる部分が小さくなり、全形を成形するのは不向きです。しかし、高精度な加工が行えることから、切削加工で全体の形を作り、研削加工で仕上げ処理をするといった使い分けがされています。
| 項目 | 切削加工 | 研削加工 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 形状の大枠を作り出す(粗加工・中仕上げなど) | 寸法や表面を微細に整える(仕上げ加工など) |
| 使用する工具 | バイトやフライスなどの「刃物」 | 硬質な砥粒を固めた「砥石」 |
| 期待できる精度 | 一般的な精度〜比較的高い精度 | ミクロン単位など、より精密な精度 |
| 削り取れる量 | 比較的多い(大きく形状を変えやすい) | 比較的少ない(少しずつ削り取る) |
| 表面の仕上がり | 刃物が通過した跡(ツールマーク)が残りやすい | 滑らかでツヤのある状態に仕上げやすい |
加工スピードが比較的速い:
一度に削り取れる量が多いため、効率よく目的の形状に近づけることができます。
多様な形状に対応しやすい:
複雑な形状でも、工具の使い分けによって柔軟に対応できる傾向があります。
超高精度な仕上がりには限界がある:
研削加工と比較すると、ミクロン単位の極めてシビアな精度要求を満たすのが難しい場合があります。
硬い素材は刃が消耗しやすい:
熱処理を施した後の硬い金属などを削る場合、工具(刃物)の寿命が短くなりやすい傾向があります。
精密な寸法出しが期待できる:
砥石で少しずつ削っていくため、微小な寸法の調整に向いており、高い精度が求められる部品の仕上げに適しています。
硬い素材でも加工しやすい:
砥粒にダイヤモンドなどの極めて硬い材質を使用できるため、焼き入れなどで硬度が高まった金属の加工もスムーズに行えます。
表面を滑らかに仕上げやすい:
ツールマーク(加工跡)が残りにくく、摩擦を減らしたい摺動面(部品同士が滑り合う面)などの仕上げ処理に向いています。
加工に時間がかかりやすい:
一度に削れる量が微細であるため、形状を大きく変えるような加工には不向きであり、全体の作業時間は長くなる傾向があります。
コストが上昇しやすい:
精密な加工を実現するためには専用の設備や細やかな温度管理が求められることが多く、切削加工と比べてコストが高くなりやすい面があります。
金属部品の製造過程において、熱処理の前後で加工方法を分けるのは非常に一般的なプロセスです。熱処理を行うと金属の硬度が高まるだけでなく、熱の影響によってわずかな歪みや変形が生じることがあるため、二段階の工程が検討されます。まずは熱処理前の比較的柔らかい状態で切削加工を行い、最終形状に近い寸法まで効率的に削り出しておきます。その後、焼き入れなどで硬度を高めた後に、発生した歪みを取り除きながら最終的な精度を整えるために研削加工を施すことで、効率と品質を両立させることが可能になります。
図面に指示された寸法公差や幾何公差の厳密さによっても、適切な加工法の選択肢は変わってきます。一般的な工業製品であれば切削加工でも十分に要求を満たせますが、より高度な精密さが求められる箇所には研削加工が選ばれる傾向があります。例えば、ベアリングが嵌まる軸受け部分や、油圧機器のように極めて高い気密性が求められる部品などが該当します。また、真円度や平行度においてミクロン単位の数値が指定されている場合や、部品同士がこすれ合う摺動面の摩擦を極限まで抑えたい場合には、砥石による精密な仕上げが欠かせません。
加工方法の選択は、製品の単価や納期に直接的な影響を及ぼす重要な要素です。研削加工は精密な仕上がりが期待できる反面、加工に要する時間が長くなりやすく、設備の稼働コストも比較的高くなる傾向があります。そのため、全ての面を研削するのではなく、精度が必要な箇所のみを研削し、その他の箇所は切削で済ませるといった設計上の配慮が求められることも少なくありません。過剰なスペックを避け、コストパフォーマンスを最大化するためには、両者の特性を正しく理解して使い分ける視点が、製造現場において非常に重要視されています。
加工方法によって使用される機械の構造や仕組みも異なります。それぞれの加工を専門に行う代表的な工作機械について紹介します。
切削加工では、工作物の形状や目的に合わせて多種多様な工作機械が活用されています。これらの多くはコンピュータによる数値制御(NC制御)が主流となっており、高い再現性を持って部品を自動的に量産することが可能です。素材側を回転させて外径を削る旋盤や、回転する刃物を移動させて複雑な形状を作り出すマシニングセンタなどが、現在の製造業を支える主要な設備となっています。用途に合わせて最適な工具を選択し、プログラムによって制御することで、一度に大量の部品を均一な品質で製造できる点が、これらの機械の大きな強みです。
研削加工に用いられる機械は、仕上げたい箇所の形状によっていくつかの形式に分類されます。平面を鏡面のように仕上げる平面研削盤や、シャフトの表面を滑らかにする円筒研削盤などが代表的です。これらの機械は、ミクロン単位の極めて微細な制御を行う必要があるため、機械自体の剛性や振動の抑制、さらには設置場所の温度管理に至るまで、非常に高いレベルでの管理が求められます。切削加工機と比較しても、よりデリケートな調整が必要とされることが多く、熟練したオペレーターの技術力が品質を左右する場面も多々見受けられます。
見た目や手触りなどの表面品質にも、それぞれの加工法ならではの特徴が現れます。完成した部品の品質を正しく評価する上でも、以下の違いを理解しておくことが有用です。
加工後の表面を詳細に観察すると、切削と研削では見た目に明確な差が生じていることが確認できます。切削加工の場合は、刃物が通過した跡が規則正しい筋状の模様(ツールマーク)として残りやすく、光の当たり方によって特有の鈍い光沢を放ちます。これに対して、研削加工は無数の細かい砥粒が面として作用するため、跡が非常に微細であり、目視では判別しにくいほど滑らかな仕上がりとなります。手で触れた際の質感も、研削加工された面は吸い付くようなツルツルとした手触りとなり、部品同士が滑り合うような機構においては、この平滑さが摩耗の抑制に繋がります。
加工プロセスにおいて避けられない副産物である「バリ」や、材料への熱の影響についても異なる特性が見られます。切削加工では大きな刃物で材料を切り分けるため、加工の終点部分に比較的大きなバリが発生しやすく、後工程での除去が必要になるケースが一般的です。一方の研削加工は、微細な削り屑として排出されるため大きなバリは出にくいものの、摩擦熱が一点に集中しやすい性質を持っています。冷却液の供給が不十分な場合、表面が酸化して変色する「研削焼け」を招き、硬度や強度の低下を引き起こす恐れがあるため、適切な温度管理が品質維持の重要な鍵となります。
切削加工会社を紹介する当メディア「切削アンサー」では、特定の要望に応えてくれる信頼できる加工会社を厳選して紹介しています。切削加工会社選びに困っている担当者はぜひ参考にしてください。
切削加工会社選びの手助けをする当サイト「切削アンサー」では、他にも切削加工の基本知識をまとめています。併せてご覧ください。
切削加工を行う会社は多くありますが、いざ問い合わせると特定の要望に対応できなかったり、不良品がでてコストがかさんだりすることも…。 当サイトを読めば、もう断られない切削加工会社が1分で見つかります。
依頼者の事情や加工品によって異なる、様々な要望に応えてくれる切削加工会社を紹介します。
なお、ここで紹介する会社は、信頼できる加工会社を選ぶ際に大前提として押さえておきたい、下記2つの規格を保有する会社の中から選定しています。
・品質担保の観点から、国際的な品質マネジメント規格「ISO9001」
・信用性の観点から、国際的な環境マネジメント規格「ISO14001」



※選定基準:2024年2月28日にGoogleにて「切削加工」「研削加工」と検索した際に表示される切削加工・研削加工に対応する会社123社を調査しました。(切削加工を依頼した際に、素材や精度により研削加工が必要になるケースもあることから、「研削加工」も含めて調査しています。)その中でも、ISO9001及びISO14001を取得する会社の中から、下記の基準でそれぞれ選定しています。
・守谷刃物研究所…難削材の加工に求められる切削加工・熱処理・研削加工を自社一貫で行う会社の中でも、難削材に対応した加工事例掲載が35件と最も多く(2024年3月調査時点)、難削材が使われやすい半導体製造装置や医療装置を得意としていると判断。
・キュリアス精機…ひと月あたりの生産可能個数が100万個以上と最も多く(2024年3月調査時点)、大量生産が求められる自動車部品の加工を得意としていると判断。
・プラスチック加工興和…樹脂の加工に対応する会社の中で、唯一樹脂の加工を専門とする会社と公式HPに記載されているため、プラスチック製品の加工を得意としていると判断。